国際エネルギー機関(IEA)の「Global EV Outlook 2026」によると、2025年の世界の電動車販売は2,000万台を超え、新車乗用車の4台に1台に達した。ただし、この「EV」にはバッテリーだけで走るBEVだけでなく、外部充電できるPHEVも含まれる。また、世界の公共充電ポイント700万口超のうち、約3分の2は中国に集中している。世界平均の数字を日本のEV選びへそのまま当てはめないため、統計の定義、地域差、日本の一般ユーザーにとっての意味を整理する。
2025年は世界新車の4台に1台が電動車
IEA公式データ:2025年の世界の電動乗用車販売は前年比約20%増の2,000万台超となり、世界の新車乗用車販売に占める割合は25%へ上昇した。年間販売が約350万台ずつ増える状況は、2021年から5年連続で続いている。
ここで注意したいのが言葉の定義だ。IEAの「electric cars」は、バッテリーだけで走るBEVと、外部から充電できるPHEVの合計であり、一般的なハイブリッド車は含まない。2025年の電動車販売に占めるBEVの割合は約65%だった。したがって、「世界の新車の4台に1台がBEVになった」という意味ではない。
情報源:IEA – Trends in electric cars, Global EV Outlook 2026
中国・欧州・米国・日本で大きな地域差
- 中国:1,300万台超。世界の電動車販売の約6割を占め、中国の新車販売に占める割合は約55%。
- 欧州:420万台。前年比30%超増加し、新車販売に占める割合は28%。
- 米国:約150万台。新車販売の約10%で、2025年第4四半期は税額控除終了などの影響により前年同期比45%減。
- 日本:10万台強で、新車販売の3%未満。2024年と同程度にとどまった。
日本の10万台強もBEVとPHEVの合計である。IEAは日本での伸び悩みについて、国内メーカーがハイブリッド技術を重視してきたこと、集合住宅の居住者が多く自宅充電設備を設けにくいこと、充電インフラの制約などを挙げている。
日本のEVユーザーにとっての意味
世界平均では電動車が25%に達していても、日本では車種構成、住宅事情、充電網、補助制度が異なる。「世界で普及しているから日本でも誰にでも向く」とも、「日本の比率が低いから実用にならない」とも一概にはいえない。
一戸建てで夜間に自宅充電でき、日常の走行距離が車両の実用航続距離内に収まる人には、現在の日本でもBEVは使いやすい。一方、集合住宅で充電設備がなく、公共急速充電だけに依存する場合は、充電場所、料金、待ち時間を購入前に具体的に確認する必要がある。
世界の公共充電ポイントは700万口超、ただし65%超が中国
IEA公式データ:世界の公共充電ポイントは2025年末に700万口を超えた。2025年中に約180万口が追加され、前年比33%超の増加となった。急速・超急速充電ポイントは2024年の約150万口から2025年には約220万口へ40%増加している。
一方、中国だけで公共充電ポイントは2024年末の約340万口から2025年末には470万口超へ増えた。2025年に中国で追加された約130万口は、世界全体の増加分の75%超に当たる。世界の公共充電ポイントの65%超が中国に存在するため、「世界に700万口ある」という数値だけでは日本での充電利便性を判断できない。
情報源:IEA – Electric vehicle charging, Global EV Outlook 2026
充電器は「基数」より口数・出力・稼働状況を見る
充電拠点が1カ所でも、同時に充電できるコネクターが複数あれば複数の充電ポイントとして数えられる。反対に、台数が多くても低出力だったり、故障や混雑が多かったりすれば実用性は下がる。日本で充電環境を調べる際は、設置場所の数だけでなく、同時充電口数、最大出力、営業時間、認証・課金方法、故障情報まで確認したい。
BYDの1.5MW充電は対応車両との組み合わせが前提
IEAは、高出力化の代表例としてBYDが2026年初頭に発表した最大1.5MWの「Flash Charging」を紹介している。一方、2025年に150kWを超える充電へ対応すると確認されたBEVモデルは約160車種、250kWを超えるモデルは約50車種だった。250kW超対応車が2010年以降のBEV累計販売に占める割合は約4%にとどまる。
充電速度は、充電器の最大出力と車両の最大受入電力のうち低い方に制約される。1,500kW対応設備へ接続しても、車両側の受入上限が50kWなら、基本的に50kWを超えて充電することはできない。バッテリー残量、温度、充電カーブによっても平均出力は変わるため、瞬間最大出力だけで充電時間を比較するのは適切ではない。
今回の1.5MW技術は、現在日本で販売されているBYD車や軽EVのRACCOが1.5MW充電へ対応するという意味でもない。日本の購入者は、日本仕様車の最大受入電力と、実際に利用するCHAdeMO充電器での10%から80%程度の所要時間を確認する方が実用的だ。
米国の家庭用充電器税額控除は2026年6月30日で終了
制度確定:米国内国歳入庁(IRS)が案内する代替燃料車向け充電設備の税額控除は、2026年6月30日までに適格設備を供用開始した場合が対象だった。個人の場合は費用の30%、充電ポートなど1設備当たり最大1,000ドルで、適格な低所得地域または非都市地域に設置するなどの条件がある。
期限までに設備を注文・購入しただけではなく、6月30日までの供用開始が必要だった。現在は期限を過ぎているため、制度の終了を確定事項として反映する。
情報源:米国内国歳入庁 – Alternative Fuel Vehicle Refueling Property Credit
この税額控除は米国の制度であり、日本の住宅用充電設備には適用されない。日本では国、自治体、集合住宅向け事業などで制度が異なるため、工事契約前に所在地と申請時期に対応する補助制度を確認する必要がある。
2035年のEV市場は「金額予測」よりIEAの政策シナリオで見る
旧記事では民間市場調査会社のプレスリリースを基に、将来の市場規模を金額で紹介していた。しかし、こうした市場規模は車両販売だけを指すのか、部品やサービスまで含むのかによって結果が大きく異なり、無料公開部分から算定方法を十分に検証できない。
そこで、将来見通しはIEAの政策シナリオへ置き換える。IEAによると、新たな政策を追加しない場合でも、二輪・三輪車を除く世界のEV保有台数は2035年に4億5,000万台超となる。発表済み政策を反映するシナリオでは、2025年比で約6倍、最大約5億1,000万台へ増える可能性がある。
世界の新車販売に占めるEV比率は、IEAの複数の政策シナリオで2035年に約50%へ上昇する。電動乗用車の年間販売は現在の約2,100万台から2035年には約5,500万台へ増える見通しだ。
ただし、これは確定した未来ではない。車両価格、各国の政策、燃料・電力価格、充電網、貿易政策などを前提にしたシナリオであり、条件が変われば結果も変わる。
情報源:IEA – Global EV Outlook 2026 Executive summary/IEA – Outlook for electric mobility
初めてEVを購入する人の確認項目
世界市場の拡大は、車種や電池技術への投資が続くことを示す材料になる。しかし、日本での購入判断では世界販売台数より、自分の生活条件に合うかが重要だ。
- BEVとPHEVを区別する:外部充電できる点は共通するが、エンジンの有無と使い方が異なる。
- 自宅・勤務先充電を確認する:毎晩普通充電できれば、公共急速充電へ行く頻度を大きく減らせる。
- 生活圏と旅行経路の充電器を調べる:場所だけでなく出力、口数、料金、利用可能時間も確認する。
- 車両の充電性能を見る:瞬間最大値だけでなく、10%から80%までの所要時間と冬季性能を見る。
- 保証と整備網を確認する:駆動用バッテリー保証、事故修理、最寄りの認定整備拠点を確認する。
- 総費用を計算する:車両価格、CEV補助金、自治体補助、自宅充電工事、電気料金、公共充電料金を合わせて比較する。
EV選びの基本はEV初心者ガイドを、日本の公共充電サービスと料金はEV充電サービス比較も参考にしてほしい。
まとめ
2025年に世界の電動乗用車販売は2,000万台を超え、新車の4台に1台に達した。ただし、これはBEVとPHEVの合計であり、地域差も大きい。公共充電ポイントも700万口を超えたが、その65%超は中国に集中する。
世界規模でEV市場が拡大していることと、日本で個人が便利に使えるかは別の論点である。日本の購入者は、自宅充電、実際に使える公共充電器、日本仕様車の航続距離と充電性能、補助金、保証・整備網を具体的に確認することで、自分に合う選択をしやすくなる。


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