速報:テスラが「TERAFAB」を発表──もはやEV会社ではない
今回の記事の下書きを書き終えた直後、決定的なニュースが飛び込んできた。
2026年3月22日、Tesla・SpaceX・xAIが関わる半導体製造構想「TERAFAB」が発表された。ロジック、メモリー、先端パッケージングなどを一つの拠点に統合し、年間1TW相当のAI計算ハードウェア生産を長期目標に掲げる構想だ。ここでいう「1テラワット」は工場の消費電力や一般的な半導体の生産量ではなく、製造する計算ハードウェアの能力を示す目標値である。
発表では、太陽光エネルギーを宇宙規模で活用するため、年間1億トンの太陽光捕捉設備を宇宙へ送り出すことや、多数のTesla Optimusロボットを活用する将来像も語られた。Teslaは、Optimusなど地上用途に100~200GW、太陽光AI衛星にはテラワット規模の計算能力が必要になり、既存メーカーの供給拡大だけでは将来需要を満たせないと説明している。ただし、これらはTesla側が示した長期ビジョンと需要予測であり、実現時期や具体的な配備計画が確定したものではない。
2026年3月、日本のEV業界に何が起きているか
この1ヶ月で、EV業界をめぐる重要なニュースが立て続けに起きた。
ホンダはEV3車種の開発を中止し、電動化計画を見直した。スズキはカナデビアから全固体電池事業を譲り受ける契約を結び、将来の技術的な選択肢を増やした。テスラはModel S・Model Xの生産ラインをOptimus製造へ転換する方針を示し——その先に「TERAFAB」という宇宙規模のビジョンが続いた。
一方、その裏では日本のEV市場がようやく再起動しようとしている動きが同時進行している。トヨタ・スバルが複数の新型EVを一気に投入し、日産は大幅進化した新型リーフで攻勢をかけ、テスラはFSDの日本展開に向けた試験を進めている。
2026年は、「EVが普及するかどうか」という問いが終わり、「どのEVが選ばれるか」「EVの先に何があるか」という問いに完全に移行した転換点だ。
日本市場の再起動①:トヨタ・スバルが第二世代EVで攻勢
トヨタは2026年2月25日、「bZ4X Touring」を国内発売した。ZグレードのFWDはWLTCモード航続距離734km、荷室容量619Lを実現している。SUBARUも4月9日に日本仕様の「トレイルシーカー」を正式発表。航続距離はET-HSが627km、ET-SSが734km、荷室容量は633Lで、走行性能と実用性を重視したBEVとなった。
国内メーカーが第一世代EVの反省を踏まえ、実用性を正面から訴える第二世代へ移行しつつある。 KONA Electricのオーナーとして輸入EVと国産EVを乗り比べてきた立場から見ると、この進化の速度は本物だ。「日本メーカーのEVは魅力が薄い」という評価が確実に変わりつつある。
日本市場の再起動②:新型リーフが価格の壁を崩す
日産の新型リーフには55kWhバッテリーを搭載した「B5」が追加され、現在の国のCEV補助金は全グレード一律129万円と案内されている。補助金を適用すると300万円を下回るグレードがあるが、適用には登録時期や制度上の要件があり、予算状況によっても変わり得る。また、日産が2026年2月に公表した約5,000台という受注台数は、B5単独ではなく新型リーフ全体の数字だ。
日産サクラのオーナーとして感じるのは、日産の「現実主義的なアプローチ」の巧みさだ。サクラが軽自動車ユーザーに刺さったように、新型リーフも「普通に買えるEV」として普通乗用車ユーザーへの入口になり得る。補助金込みで300万円を切るBEVが国産メーカーから出てくることの意味は大きい。
テスラの転換──「EV会社」を超えて「文明インフラ企業」へ
テスラの変化は段階的に進んできた。Model S・Model Xの日本向け新規生産終了が案内され、その後、フリーモントの両車種の生産ラインをOptimus製造へ置き換える方針が示された。Teslaの2026年第1四半期資料では、この第1世代ラインは年間100万台の設計とされている。そしてTERAFABが、自動車、ロボット、AI、宇宙事業を半導体供給で結ぶ構想として加わった。
テキサス州へ提出された資料では、TERAFABは半導体の設計、フォトマスク、ウエハー製造、先端パッケージング、システム統合などを同一拠点へ集約する計画とされる。最大4段階での開発が想定され、初期フェーズの総投資額は550億~1,190億ドルと記載されている。ただし、これは申請時点の計画であり、全工程の建設や生産目標の達成が保証されたものではない。それでも、自動車会社の枠を超えた構想であることは確かだ。
日本ではFSD(Supervised)の試験も進められている。 2026年3月には、国内テスト走行を体験したモータージャーナリストのレポートも公開された。ただし、2026年7月時点で日本の一般ユーザー向け提供は確認できず、正式な提供時期は規制当局の承認などに左右される。TERAFABの半導体が将来のTesla車、Optimus、宇宙向け計算基盤に使われることは想定されるが、現在販売済みのModel 3・Model Yを含む具体的な対象車両やチップ、時期は公表されていない。
2026年の構図
各社の立ち位置を整理すると、多様な方向性が並ぶ。ホンダはEV計画を見直し、スズキは全固体電池技術を将来の選択肢として取得した。トヨタ・SUBARUは実用性を高めたBEVを投入し、日産は価格帯を広げて普及を狙う。BYDも商品展開を続けている。その中でTeslaは、自動車に加えてロボット、AI、エネルギー、宇宙を結び付けようとしている。
JAPAN EV OF THE YEAR 2025の上位3台——テスラ「モデルY」、日産「リーフ」、BYD「シーライオン7」——が米・日・中に分散したことが、多様化の時代への移行を象徴している。だがテスラにとって、このランキングはもはやメインステージではなくなりつつあるのかもしれない。
EVオーナーとして:テスラのビジョンに、私は乗り続ける
Tesla Model 3・Model Y・KONA Electric・日産サクラの4台を所有する立場から、率直に言う。
TERAFABの発表を見て、テスラへの期待がさらに高まった。
「人間が運転する車は他社に任せてしまえばいい」——以前からそう思っていたが、今回の発表はその考えを強化した。テスラがやろうとしているのは移動手段の改善ではなく、人類の活動領域を宇宙に拡張するためのインフラ建設だ。Optimusが数百万台稼働し、太陽光AI衛星が軌道上に展開される未来において、地上の自動車はそのエコシステムの一部に過ぎなくなる。
今乗っているModel 3・Model Yがソフトウェア更新によって進化し、その先にTERAFABを含む半導体戦略がある——そうした壮大なバックストーリーを持つ車に乗っている感覚は、「いいEVを持っている」という次元を大きく超えている。ただし、既存車が日本で将来どこまでFSDに対応するか、TERAFAB製チップが既存車を直接支えるかは、現時点では確定していない。
唯一の不安は、ビジョンが壮大であればあるほど目の前のEV事業が後回しになるリスクだ。スーパーチャージャーの拡充ペース、OTAの更新頻度、日本市場向けサポート——これらがOptimus・TERAFAB事業に押されて薄れていかないか。テスラとの関係はソフトウェアとインフラを含む長期的なコミットメントを前提にしている以上、その姿勢が変わらないかどうかを注視し続けたい。
まとめ:問いの次元が変わった
TERAFABの発表でテスラが突きつけた問いは、EVの文脈をはるかに超えている。
日本ではトヨタ・SUBARUの新型BEVが実用性を訴え、新型リーフが購入可能な価格帯を広げ、BYDも競争を加速させている。筆者としては、議論の中心が「EVが普及するかどうか」から「どのEVが、どの用途で選ばれるか」へ移り始めたと感じている。
その次の問い——「EVの先に何があるか」——に対して、テスラは「宇宙文明の建設」という答えを出してきた。
私がテスラに乗り続ける理由も、そこにある。「今最もいいEVだから」ではなく、「EVの先にある未来を最も本気で、最も壮大なスケールで作ろうとしているから」——その賭けに、4台のEVオーナーとして乗り続けている。
主な確認資料
- TERAFAB公式サイト
- テキサス州政府へのTERAFAB申請資料(PDF)
- Tesla 2026年第1四半期アップデート(PDF)
- Tesla「Full Self-Driving(Supervised)」
- トヨタ「bZ4X Touringを発売」
- SUBARU「新型トレイルシーカーを発表」
- 日産「リーフ 補助金・優遇策」
※2026年7月22日時点で公開されている情報をもとに確認・更新しました。
長谷川 孝 / ev-note.jp Tesla Model 3・Model Y・KONA Electric・日産サクラ オーナー


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