日本のEV市場はどう変わったか|2026年2月の登録統計と車種別動向

日本のEV市場はどう変わったか|2026年2月の登録統計と車種別動向 EV考察

2026年9月13日再点検・更新:本文の該当箇所を更新しました。過去の発表日・統計の集計期間は、その時点の情報として記載しています。

2026年3月、日本のBEV・PHEV市場が前年同月より拡大したことを示す販売データが公表された。

JADAの2026年2月原表では、軽自動車を除く登録乗用車21万1,362台のうち、BEVは6,245台、PHEVは3,334台。比率を再計算するとBEVは2.95%、BEVとPHEVの合計は4.53%となる。前年同月の同じ範囲では、それぞれ1.02%、2.29%だった。

登録BEVは前年同月2,380台から6,245台へ増えた。ただし、これは軽自動車を含まない統計である。補助金や新型車が後押しした可能性はあるが、単月の数字だけで市場全体の転換や因果関係を確定することはできない。

以下では、2月の登録乗用車統計を軸に、1月のメーカー・車種別動向と、その後の車種投入を区別して整理する。


統計の読み方:まず「数字の枠組み」を理解する

記事の本論に入る前に、統計の構造を整理しておきたい。ここを知らずに数字だけを読むと大きな誤解を生む。

原統計から再計算した登録乗用車の比率

対象BEVPHEV乗用車総数BEV比率BEV+PHEV比率
2026年2月6,245台3,334台211,362台2.95%4.53%
2025年2月2,380台2,989台234,257台1.02%2.29%

分母・分子はともに軽自動車を除く登録乗用車。BEV比率=EV欄÷乗用車計×100、合計比率=(EV欄+PHV欄)÷乗用車計×100。小数第3位を四捨五入しました。輸入車はJADAの合計に含まれるため、JAIAの台数を再加算しません。JADA・2026年原表/JADA・2025年原表

旧記載の「3.21%」を市場全体の比率に使わない理由

旧記載の3.21%は、(登録BEV 6,245台+PHEV 3,334台+サクラ752台+eKクロスEV 205台)÷(登録乗用車211,362台+軽乗用車117,172台)×100=3.207…%という計算では再現できる。しかし、この分子にはN-ONE e:の台数が含まれていない。軽自連の通称名別表にはN-ONE全体の台数が掲載され、そこからBEVだけを分離できないため、3.21%を日本のBEV・PHEV全体の比率として示す説明を撤回する。軽自連・2月通称名別確報/軽自連・乗用車総数(前月欄)

  • 「登録車の乗用車」は日本自動車販売協会連合会(自販連)が集計
  • 「軽自動車」は全国軽自動車協会連合会(軽自連)が集計
  • 本稿の再計算は登録乗用車に限定。軽EVは別枠で扱い、市場全体の比率や歴代最高の判断に混ぜない。

テスラは「その他」に分類される

EV販売で存在感の大きいTeslaだが、日本自動車輸入組合(JAIA)の統計ではブランド名が個別表示されず、複数ブランドを含む「その他(Others)」に分類される。このため、「その他」の全台数をTeslaの販売台数とみなすことはできず、国内メーカーの車名別統計とも単純比較できない。

商用車データは翌月以降に判明

e-ハイゼット カーゴ、ピクシス バン BEVなどの軽商用車は軽貨物車であり、本稿の乗用車比率には含めない。登録乗用車・軽乗用車・軽貨物車を分け、同じ車名にエンジン車とEVが含まれる場合は車名合計をEV台数として使わない。


メーカー別動向:どこが動いているか

トヨタ:登録BEVの増加と車種拡充

2026年1月はトヨタのBEV販売が大きく伸びた。2月にはbZ4X Touring(Z・FWDはWLTC航続距離734km、575万円から)とピクシス バン BEVを投入し、乗用車から軽商用バンまでラインアップを拡大した。

bZ4X Touringなど新型車の効果については、発売後の複数月の販売データを見て判断する必要がある。

日産:新型リーフがサクラの後を受け台頭

2026年1月時点で日産のEV販売台数は2,106台。内訳が興味深い。

軽自動車の「サクラ」は1月に670台と前年(2,289台)から大幅に減少した。サクラは2022年6月の発売以来、日本のEV市場を牽引してきた立役者だが、2023年には早くも新車効果が峠を越え、2024年6月の一部仕様向上も装備追加・新色追加にとどまる小規模なものだったため、販売の下降トレンドを反転させるには至らなかった。発売から約3年半が経過した2026年初頭時点では、その影響が数字に出ている形だ。

サクラは2026年6月にマイナーチェンジされ、フロントデザインの変更や100V・1500W AC電源のメーカーオプション設定などが行われた。販売の再活性化につながるかは、今後の実績を確認したい。

一方、登録車の新型リーフは2026年1月に車名別で1,376台を登録し、前年同月から大きく増えた。この数字をB7だけの実績とは断定できない。日産が2月に公表した約5,000台は新型リーフ全体の受注台数であり、B5単独の数字ではない。また、B5は1月29日に発表されたため、1月の登録増とB5追加後の効果は分けて考える必要がある。

サクラの販売が踊り場に入る一方、リーフの回復が日産全体のEV販売数を下支えする構造が見て取れる。日産の戦略は「軽EV+登録車」の二本柱で価格帯を広げるもので、日本市場への現実主義的なアプローチとして評価できる。

ホンダ:N-ONE e:が軽EV市場で存在感、一方で大幅な戦略転換

ホンダの軽EV「N-ONE e:」は、サクラに続く軽乗用BEVの選択肢として2025年9月に発売された。この記事で「好調」と評価できるだけのメーカー別受注・販売資料は確認できないため、販売動向は公表統計を継続して見る必要がある。

ホンダが3月12日に開発・発売の中止を発表した北米向け3車種は、Honda 0 SUV、Honda 0 Saloon、Acura RSXである。3車種すべてがHonda 0シリーズというわけではない。軽EVの国内投入と、北米向け大型投資の見直しを分けて見る必要がある。

輸入車(テスラ・BYD・ヒョンデ):日本市場の潮流を作る

2026年1月のJADA「輸入車」欄はBEVが2,209台、PHEVが525台で、合計2,734台だった。旧記載はこの合計をBEV単独と誤記していた。前年同月のBEVは1,209台、PHEVは793台。BEV単独の増加率は82.7%となる。またJADAは日本メーカーの海外生産車も輸入車に含めるため、この欄を外国ブランドだけの実績と言い換えることはできない。

参考:ブランド別の登録動向(BEVだけの内訳ではない)

  • Tesla:JAIAでは個別ブランドの台数が開示されず「その他」に含まれる。「その他」の約1,080台をTeslaの確定販売台数として扱うことはできない
  • BYD:1月のブランド登録は156台(前年42台)。BEVとPHEVを併売しており、ブランド合計をBEVだけの販売実績として扱わない。
  • ヒョンデ:71台(INSTER 35台含む)。小型車市場での存在感を徐々に高めている

Teslaは統計上の個別台数を確認しにくいため、他社と比較する場合は推計値であることを明示する必要がある。

スバル・BYD:新たな参戦者が存在感を示す

SUBARUは2026年4月9日に第2弾BEV「トレイルシーカー」の日本仕様を正式発表した。BYDは1月に156台を登録し、前年同月の42台から増加した。単月の伸び率は大きいものの、継続的な成長かどうかは複数月で見る必要がある。


車種別動向:何が売れているか

軽EV市場:サクラ後継期に入りつつある

日本のEV市場を強力に引っ張ってきたのは軽EVだ。日産サクラは2022年6月の発売以来、日本のEV販売台数No.1を3年連続で維持し、軽自動車市場でのEV普及を牽引してきた。

ただし、発売から約3年半が経過し、販売の勢いが落ち着いてきた。そこに新たな選択肢として登場したのがHonda N-ONE e:だ。特定の年齢層や性別への訴求を裏付ける資料は確認できないが、WLTC航続距離295kmなど、サクラとは異なる商品特性を持つ軽乗用BEVとして選択肢を広げた。

BYDの日本専用軽EV「RACCO(ラッコ)」は2026年7月28日に正式発売された。税込車両価格はRACCO 200が214万5,000円、300 Plusが239万8,000円、300 Premiumが249万7,000円。WLTC航続距離は200が210km、300の2グレードが320kmである。軽スーパーハイトワゴンの選択肢が増えたことと、実際に販売台数が増えたことは分けて評価したい。BYD正式発売発表

登録車市場:新型リーフの価格と補助金を分けて見る

登録車の最大のキーワードは「価格」だ。テスラやBYDが日本市場で競争力を持つ理由の一つもここにある。その中で特筆すべきは、新型リーフが打ち出した「廉価グレード戦略」だ。

新型リーフB5 Sの税込車両価格は438万9,000円で、CEV補助金129万円を単純に差し引くと309万9,000円となる。国の補助金だけで300万円を下回るわけではない。オプション、登録諸費用、税金、充電設備費用は別途必要で、自治体補助も条件によって異なる。日産公式・リーフB5価格

商用車市場:軽バンEVの潜在的なポテンシャル

2026年2月、3社が共同開発したBEVシステムを採用する軽商用バンe-ハイゼット カーゴ、e-アトレー、ピクシス バン BEVの販売が始まった。「商用軽バンが日本全体の新車販売の約20%」という根拠は確認できず、軽自動車全体と軽商用車を混同しない注意が必要だ。軽商用BEVの普及は市場の一定の上積みになり得るが、EV比率を数ポイント引き上げるとまでは現時点で予測できない。


市場を動かした2つの追い風:補助金と新車

登録BEVの増加の背景として考えられる、2つの追い風を整理する。ただし、個々の要因が販売増へ与えた効果をこの統計だけから分離することはできない。

① CEV補助金の大幅増額

2026年1月1日以降に新規登録される車両では、CEV補助金の上限がEVは90万円から130万円、PHEVは60万円から85万円へ引き上げられた。ただし、実際の補助額は車種ごとの評価で異なる。東京都など自治体の補助も、車種、給電機能、再エネ電力契約などの条件によって金額が変わるため、誰でも一律に最大額を受け取れるわけではない。

② 新型車投入の一斉投下

2025年後半〜2026年第一四半期にかけて、日本市場向けの新型モデルが相次いで投入された。新型リーフ、N-ONE e:、bZ4Xツーリング、スズキeビターラ、e-ハイゼットカーゴ、ピクシスバンBEV——これだけの車種が短期間で揃ったことで、「選べるEVがない」という従来の不満が解消されつつある。購入を検討していた層が動き始めるのは自然な流れだ。


4台のEVオーナーの目線で:「再起動」は本物か

Tesla Model 3・Model Y・KONA Electric・日産サクラの4台を所有する立場から率直に言う。

登録BEVの台数増は確認できる。一方、4台のEVを所有する立場で感じる市場の変化は個人の評価であり、全国の需要や購入理由を示す統計とは区別して受け止めたい。

ポジティブな変化:車種の選択肢が広がり、新型リーフB5 Sでは国の補助金を差し引いた車両本体相当額が309万9,000円になる。購入判断では、この本体相当額に諸費用と充電環境の整備費を加えて比較することが重要だ。

懸念点:補助金の予算終了や車種別の適用条件は、購入時期と負担額に影響する。ガソリンの暫定税率は2025年12月31日に廃止済みであり、今後の廃止を仮定した比較は適切ではない。EVとガソリン車の維持費は、現在の実売燃料価格と契約電気料金を使って比較する必要がある。

見立て:登録BEVの増加は市場回復の可能性を示す材料だ。だが、それが定着するかどうかは複数月のデータを見なければ判断できない。2026年6月にマイナーチェンジしたサクラや、7月28日発売のRACCOが今後の軽EV市場に与える影響も重要な変数になる。


まとめ:比較対象をそろえて回復の継続性を見る

日本のEV市場は状況が複雑だ。一方でホンダの大型撤退、他方でトヨタ・日産・スバルの新型投入、テスラのAI・EV戦略の変化——あらゆる動きが共存している。

2月の登録BEVが前年同月より増えたことは原統計で確認できる。ただし、軽EVを含む市場全体の比率や過去最高という評価は、同じ範囲の全車種・全期間をそろえた検証が必要であり、本稿では断定しない。

その後、日産サクラは2026年6月にマイナーチェンジし、SUBARU「トレイルシーカー」は4月9日に正式発表された。BYD「RACCO」は7月28日に発売済みである。スズキも8月24日に軽乗用EV「e SKY」の先行情報を公開し、2026年秋の発表を予告した。これらの車種投入が販売比率に与える影響は、発売後の統計で継続して確認したい。スズキ・e SKY先行情報

今後は登録乗用車と軽乗用車を分け、BEV・PHEVの台数を同じ定義で継続して比べたい。購入者にとっては、シェアの上昇だけでなく、選べる車種、必要な充電回数、購入費と維持費が自分の使い方に合うかが重要になる。


主な確認資料と集計上の注意

2026年9月13日の再点検で、旧3.21%の計算範囲とN-ONE e:の欠落を確認し、タイトル・抜粋・本文を訂正しました。掲載する比率はJADAの登録乗用車に限定した再計算値です。軽自動車を含む市場全体の比率とは異なります。

※統計の再点検日:2026年9月13日。販売台数の対象月は各段落に記載しています。

長谷川

2021年よりテスラ Model 3 でEVオーナーとしてのキャリアをスタート。現在はテスラ Model 3・Model Y、Hyundai KONA、日産サクラの計4車種を保有し、日常使いから長距離走行まで実践的に運用しています。
TOCJ(Tesla Owners Club Japan)全国ミーティング、New Year EV MEET 2026、ジャパンEVラリー白馬などのEVオーナーズイベントや、Japan Mobility Showの見学など、現場での情報収集にも積極的に取り組んでいます。多数の試乗経験と4台のオーナー経験をもとに、日本におけるEVの実態を一次情報として発信。購入検討から日常運用まで、実体験に基づいた信頼性の高い情報提供を心がけています。
現在の所有車:Tesla Model 3 / Tesla Model Y / Hyundai KONA Electric / 日産サクラ
テスラ車購入時に使用できる紹介コード:
https://www.tesla.com/ja_jp/referral/hasegawa44580
※この紹介リンクを経由して購入した場合、紹介者に特典が付与されることがあります。

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