2026年3月25日、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)は「AFEELA 1」と第2弾モデルの開発・発売中止を発表した。
その後、4月21日にはソニー、ホンダ、SHMの3社がSHMの事業縮小を決定したと公表した。本稿では、発表された事実と筆者の見解を分けながら、AFEELA計画が何を残したのかを考える。
公式発表:AFEELA 1と第2弾モデルを中止
SHMは3月25日、これまで開発していた第1弾モデル「AFEELA 1」と第2弾モデルについて、開発と発売を中止すると発表した。
理由として挙げられたのは、ホンダが3月12日に発表した四輪電動化戦略の見直しだ。当初の事業計画でホンダからの提供を前提としていた技術やアセットを活用することが難しくなり、従来計画のまま事業を継続する道筋を見いだせなくなったとしている。
カリフォルニア州でAFEELA 1を予約していた顧客には、予約金の全額返金を速やかに開始すると案内された。
ソニーは、2025年度および2026年度の連結業績に一定の影響が生じる可能性があるとしながらも、SHMがアセットライトな事業運営を行ってきたことから、ソニーグループ全体の連結業績や財政状態に重要な影響を与えるとは見込んでいないと説明している。
4月21日、SHMの事業縮小が決定
車両計画の中止から約1カ月後の4月21日、ソニー、ホンダ、SHMは、従来の枠組みでは短中期に商品・サービスを市場へ投入することが難しいと判断し、SHMの事業を縮小すると発表した。
SHMの従業員は、本人の希望も考慮しながら、原則としてソニー、ホンダ、両社の関係会社などへ再配置される。ただし、3社はSHMの解散を発表したわけではない。今後は、高度運転支援システム(ADAS)が進化する時代のソフトウェアを中心としたユーザー体験について、協業の可能性を引き続き検討するとしている。
したがって「AFEELAの市販車計画は消滅した」とはいえるが、SHMという法人や、ソニーとホンダの協業そのものが直ちに消滅したと断定することはできない。
背景:ホンダが北米向けEV3車種を中止
ホンダは3月12日、北米で生産予定だった「Honda 0 SUV」「Honda 0 Saloon」「Acura RSX」の3車種について、開発・発売の中止を発表した。EV需要や競争環境を踏まえ、販売を始めれば将来にわたって損失が拡大する可能性があると判断したためだ。
これはホンダのEV事業全体からの撤退ではない。ホンダは、長期的には乗用車領域でEVが最適解だという考えを維持している。一方、当面は資源配分を見直し、2027年3月期から2029年3月期までのEV投資を0.8兆円規模に抑え、ハイブリッド車やソフトウェアへ重点的に投資する方針を示した。
ホンダは2024年、2031年3月期までの10年間に電動化・ソフトウェア領域へ約10兆円を投入する計画を示していたが、2025年には7兆円へ縮小した。なお、当時示されていた「2026年3月期までに3.5兆円」は投入実績ではなく、その時点での計画値である。
損失額:最大2.5兆円は「確定額」ではない
3月12日の発表時点でホンダが示したのは、2026年3月期に8200億円から1兆1200億円の営業費用、1100億円から1500億円の持分法投資損失を計上するという概算だった。「最大2兆5000億円」は、翌期以降に生じる可能性のある追加費用まで含めた試算であり、確定損失ではない。
5月14日に発表された2026年3月期決算では、EV関連損失は合計1兆5778億円となった。全社では営業損失4143億円、親会社の所有者に帰属する損失4239億円を計上している。EV関連損失とホンダ全社の最終損益は、区別して見る必要がある。
発売直前に見えたAFEELA 1
SHMは、米オハイオ州のホンダ・イーストリバティ工場でAFEELA 1の試作生産を実施していた。中止前の計画では、2026年中にカリフォルニア州で納車を始め、日本では2027年前半に投入する予定だった。
2026年1月のCESではAFEELA 1のプリプロダクションモデルに加え、第2弾モデルにつながる「AFEELA Prototype 2026」を公開。第2弾の量産モデルは、早ければ2028年に米国市場へ投入するとしていた。3月16日にはカリフォルニア州トーランスのスタジオ&デリバリーハブ開設を発表し、21日にオープニングイベントも実施している。
価格はベースモデル「Origin」が8万9900ドル、上位モデル「Signature」が10万2900ドル。公式仕様では91kWhのバッテリーと最大150kWの直流急速充電に対応する。一方、電圧アーキテクチャーは公式に公表されておらず、「400V」という情報は仕様などからの推測にとどまる。
技術と価格をどう評価するか
ここからは筆者の評価になる。
AFEELA 1は、ソニーのセンサー、AI、車載エンターテインメントと、ホンダの車両開発・生産を組み合わせる点に独自性があった。しかし、9万ドル近い価格帯で最大150kW充電という仕様は、より高い充電性能を備える競合車と比べて訴求力が弱く映った。
ただし、800Vシステムや500kmを超える航続距離がすべてのEVで標準になったわけではない。充電性能、実航続距離、ソフトウェア、乗り心地、販売後のサポートを含めた総合商品力で評価すべきだろう。
中国メーカーの進化も速い。一方、テスラの2025年の世界納車台数は163万6129台で、前年から減少している。
Xiaomi SU7 Ultraの市販モデルは、ニュルブルクリンク北コースで7分04秒957を記録し、「電動エグゼクティブカー」部門の記録を樹立した。6分22秒091というさらに速い記録は市販車ではなくプロトタイプによるもので、両者は区別する必要がある。
4台のEVオーナーとして
Tesla Model 3、Model Y、KONA Electric、日産サクラの4台を所有する立場から率直にいえば、AFEELAへの期待は発売中止前から小さくなっていた。
ソニーのAIやエンターテインメントを車載プラットフォームに統合する構想には魅力があった。しかし開発に時間を要する間に、中国メーカーを含む競合は車両性能だけでなく、スマートフォンやスマートホームとの連携、車載ソフトウェア、量産速度を大きく進化させた。
AFEELAが提示した「モビリティを創造的なエンターテインメント空間にする」という考え方には意味があった一方、その価値が高価格を納得させるほど明確に伝わっていたかは疑問が残る。今回の中止は、「ハードウェアを他社に依存し、ソフトウェアで差別化する」合弁モデルの難しさと、長い開発期間の間に市場が変化するリスクを示したと感じる。
まとめ:市販車計画は終了、協業の可能性は残る
AFEELA 1と第2弾モデルの市販計画は終了し、SHMの事業も縮小される。2020年のVISION-S、2022年の合弁設立、CESでの継続的な発表を経て、ソニーとホンダによる完成車事業は市場投入に至らなかった。
一方で、SHMの解散は発表されておらず、3社はソフトウェアを中心とするユーザー体験で協業を検討するとしている。AFEELAで蓄積されたセンサー、ADAS、車載ソフトウェア、エンターテインメントの技術が、今後どのような形で生かされるかを引き続き見ていきたい。
主な公式資料
- ソニー・ホンダモビリティ:AFEELA 1および第2弾モデルの開発・発売中止
- ホンダ:ソニー・ホンダモビリティの事業方針見直し
- ソニー:AFEELA開発・発売中止による業績影響
- ホンダ:SHMの事業縮小に関する3社発表
- ホンダ:四輪電動化戦略見直しと損失見込み
- ホンダ:2026年3月期決算説明会資料
- Tesla:2025年生産・納車実績
- ニュルブルクリンク:Xiaomi SU7 Ultra公式記録
2026年7月22日、公式発表および最新の決算資料に基づいてファクトチェック・更新。
長谷川 孝 / ev-note.jp
Tesla Model 3・Model Y・KONA Electric・日産サクラ オーナー


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