2026年2月、世界のプラグイン車販売は約110万台となり、前年同月比・前月比とも約11%減少しました。しかし地域別に見ると、EUではBEV比率が上昇する一方、米国では税額控除終了後の反動が続き、中国では税優遇の縮小と買い替え制度の移行が需要を揺らしています。日本ではBEV販売が大きく伸びましたが、4月開始の新補助額を2月実績の原因とすることはできません。
最初に確認:世界110万台の「EV」はBEVだけではない
2026年2月の世界販売約110万台、前年同月比11%減という数字は、Benchmark Mineral Intelligenceの集計として確認できます。ただし、ここでいうEVはBEVにPHEVなどを加えたプラグイン車です。BEVだけを集計するACEAや日本の自販連統計とは対象が異なります。
この集計では、欧州が前年同月比で増加し、中国と北米が減少しました。しかし、各地域の差を「補助金の有無」だけで説明することはできません。春節、景気、金利、モデル投入、規制、在庫、税制変更、買い替え制度などが同時に動いているためです。
2026年初頭の4市場を同じ物差しで見る
| 地域 | 確認できる動き | 政策・市場要因 |
|---|---|---|
| EU | 1~2月のBEVシェア18.8%。前年同期15.2%から上昇 | CO2規制、国別支援、車種増加、社用車税制 |
| 米国 | 2025年Q3の10.5%からQ4は5.8%へ低下。2026年2月は6.5% | 税額控除終了前の駆け込みと反動、金利、価格 |
| 中国 | 2月は乗用車市場全体とNEVが減速 | 購入税優遇の縮小、買い替え制度移行、春節、景気 |
| 日本 | 2月の乗用BEVは7,790台、前年同月比77.4%増、シェア2.4% | 新型車投入。新しい最大130万円は4月登録分から |
補助や税制は購入時の実質価格を変える重要な変数です。しかし、統計が示すのは政策と販売が同時に変化したことです。因果関係を評価するには、車両価格、モデル数、供給、景気、規制などを合わせて見る必要があります。
米国:最大7,500ドルの税額控除終了と駆け込みの反動
米国の新車クリーンビークル税額控除は最大7,500ドル、中古クリーンビークル税額控除は最大4,000ドルでした。2025年7月成立の法律により、いずれも2025年9月30日までに取得した車両を最後に終了しています。
Cox Automotiveによると、BEVシェアは税控除終了前の2025年第3四半期に10.5%へ上昇し、第4四半期には5.8%へ低下しました。2025年通年販売は約127万台で、2024年比では約2%減です。終了前の駆け込みと終了後の反動が四半期の振れを大きくしたと考えられます。
Edmundsの集計では2026年2月のBEVシェアは6.5%でした。税控除終了で市場が縮小したことは確認できますが、需要やメーカーの販売意欲が「ほぼ消えた」とまでは言えません。メーカー値引き、リース、州制度、より安価な車種が連邦税控除の一部を代替しています。
カリフォルニア規制は「単純に廃止」ではない
連邦議会と大統領は2025年6月、Advanced Clean Cars IIを執行するためEPAが認めた適用除外を無効化しました。一方、カリフォルニア州などは、この手続きが違法だとして連邦政府を提訴しています。
また、ACC IIは2035年モデルで全車をBEVに限定する規則ではありません。80%以上をゼロエミッション車とし、残る最大20%には要件を満たすPHEVを認める設計です。現状は、連邦による無効化と州側の訴訟が続く不確実な状態と表現するのが正確です。
EU:BEVは成長したが「各国が補助を維持したから」だけではない
ACEAによると、EUの2026年1~2月の新車登録全体は前年同期比1.2%減でした。一方、BEVは31万2,369台、シェア18.8%となり、前年同期の15.2%から上昇しました。PHEVも16万2,751台、シェア9.8%へ伸びています。
EU加盟国の購入支援は一様ではありません。フランスは所得と車両の環境スコアに連動した支援を継続し、ドイツは2023年末に購入補助を終了した後、2026年に30億ユーロ規模の新制度を導入しました。さらにEUの新車CO2規制、社用車税制、充電網規則、低価格モデルの増加も販売を支えています。
ドイツのBEV登録は、2023年の約52.4万台から2024年は約38.1万台へ減少しました。補助終了は大きな要因でしたが、欧州全体を「補助維持国」と一括りにすることはできません。
BYDの成長とテスラの回復
2026年2月の欧州(EU・EFTA・英国)では、BYDが1万7,954台、テスラが1万7,664台となり、BYDが2カ月連続で上回りました。ただし、テスラを「欧州で急落中」と固定的に評価するのも不正確です。
ACEAの1~5月集計では、全ブランド登録ベースでBYDは前年同期比145.2%増、テスラは57.2%増となっています。テスラは2025年の落ち込みから回復していますが、BYDの伸び率がさらに大きい状況です。
イーロン・マスク氏の政治活動がブランド評価へ影響したとする研究や調査はあります。一方で、Model Yの切り替え、ラインアップ、価格、競争激化も販売を左右します。販売変化のすべてを政治活動だけに帰属させることはできません。
IZA:Political Identity and Consumer Behaviour—Musk and Tesla in Germany
中国:「補助金終了」ではなく、税優遇縮小と制度移行
中国では2025年末でNEV購入税の全額免除が終了しましたが、支援そのものがなくなったわけではありません。2026~2027年は購入税を50%軽減し、乗用車1台あたり最大1万5,000元の減税が続きます。
自動車の買い替え・廃車更新支援も2026年に継続しています。ただし、固定額から車両価格に連動する方式への変更や地域ごとの実施時期があり、前年末の駆け込み需要の反動が生じました。
2月の減速には、優遇縮小に加えて春節、景気・不動産市場、前年の高い比較対象、過度な価格競争も関係しています。「市場飽和・補助金終了」の二語だけでは説明できません。また、国内販売が弱い一方で輸出は増えており、中国メーカーの競争力全体が同じ割合で低下したわけでもありません。
日本:2月の販売増と4月の130万円補助を混同しない
2026年2月の国内乗用BEV販売は7,790台、前年同月比77.4%増で、乗用車販売に占める比率は2.4%でした。「100%超」ではありません。bZ4Xや新型リーフなどの商品投入が販売を押し上げました。
一方、CEV補助金の最大130万円は2026年4月1日以降に登録する車両が対象です。したがって、2月販売の伸びを最大130万円への引き上げの効果とすることは時系列上できません。新制度の影響は、4月以降の登録、車種別受注、納期、メーカー施策を確認して評価する必要があります。
日本のCEV補助金は、車両性能だけでなく、充電インフラ、整備、災害対応、供給安定、資源循環などメーカーの取り組みも評価します。この点で、単なる購入支援より産業政策の性格が強まっています。ただし、メーカー別の採点結果が公開されていないため、テスラ127万円、BYD15万円などの差を特定の一項目だけで説明することはできません。
4台のEVを所有する立場から:補助額と保有期間を一緒に考える
私はTesla Model 3、Model Y、Hyundai KONA、日産サクラを所有しています。その経験からも、100万円を超える補助は購入判断を大きく動かすと感じます。一方、補助額だけで車を選ぶのは危険です。
EVの中古価格は、補助金、メーカーの新車価格改定、電池・充電性能の進化、中古市場の需要に影響されます。所有する4台でも価格変化を実感していますが、すべてのEVがエンジン車より速く値下がりすると一般化することはできません。人気車種、電池保証、走行距離、事故歴、充電規格によって差があります。
購入時には次を合わせて確認すべきです。
- 補助金を差し引いた実支払額
- 自治体補助と適用条件
- 3年または4年の保有義務と、早期売却時の返納
- メーカーの値下げ・モデルチェンジの可能性
- 下取り相場と電池保証
- 自宅充電、公共充電、保険、整備を含む総費用
補助金は「得する金額」だけでなく、保有期間を縛る条件でもあります。短期間で乗り換える可能性があるなら、補助額と返納条件を必ず同時に確認する必要があります。
補助金が市場へ与える短期効果と長期的な課題
米国の税控除終了前後やドイツの補助終了後の動きは、購入支援が短期需要を大きく動かすことを示しています。しかし、販売変化を補助金だけの効果として切り出すことはできません。
長期的な普及には、次の条件が必要です。
- 補助がなくても選ばれる車両価格と商品力
- 自宅・集合住宅・経路充電の整備
- 修理、部品、保険、電池診断の体制
- 中古EVの適正な電池評価と流通
- 急な制度終了を避ける予見可能な縮小計画
- 産業政策としての評価基準と採点結果の透明性
補助を突然終了すれば駆け込みと反動を生みます。反対に、高額補助を長期間固定すれば、価格競争や中古価格をゆがめる可能性があります。普及率や価格差に応じて段階的に縮小し、充電・中古流通・電池評価など市場基盤へ支援を移す設計が望まれます。
まとめ
購入補助や税制はEV需要を短期的に大きく動かします。しかし、2026年初頭の地域差は、補助金だけでなく、規制、車両価格、モデル投入、金利、景気、春節、充電環境によって生じています。
米国では税控除終了前の駆け込みと反動が明確に表れ、EUでは国ごとに異なる支援とCO2規制のもとでBEV比率が上昇しました。中国は支援を終了したのではなく縮小・再設計し、日本の最大130万円は2月ではなく4月以降の登録に適用されます。
補助金は市場を立ち上げる有効な手段ですが、最終目標は補助なしでも選ばれるEV、中古車として安心して流通するEV、充電と整備を含めて維持できる市場を作ることです。


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