eMPが2026年4月からビジター向けkWh課金を導入——料金・対象96カ所・車種別の損得を検証

eMPが2026年4月からビジター向けkWh課金を導入——料金・対象96カ所・車種別の損得を検証 EV充電

2026年4月1日12時から、e-Mobility Power(eMP)は、同社が設置・運営する直営急速充電スポットの一部で、ビジター利用料金にkWh課金(従量課金)を導入した。対象は開始時点で96カ所・177口。eMPネットワーク全体や充電カード会員の料金が一斉にkWh課金へ変わったわけではない。本記事では制度の適用範囲と料金を整理し、車種・充電状況によって本当に得になるのかを検証する。

変更点は「ビジター料金」の2本立て

① 96カ所の直営スポットでkWh課金

特定計量制度に対応する計量器を備えた直営急速充電スポットでは、充電時間ではなく実際に充電した電力量に応じて料金が決まる。2026年4月1日時点の内訳は、高速道路のSA・PA等が81カ所・148口、一般道路が15カ所・29口で、合計96カ所・177口だ。

対象充電器には「従量課金対応ステッカー」が掲示されるほか、eMP公式の充電マップ・アプリでも確認できる。対象は今後順次拡大すると案内されているため、利用前に最新表示を確認したい。

② それ以外の直営スポットは出力別時間課金

kWh課金に対応していない直営急速充電スポットは、充電器の立地、高速道路か一般道路か、充電器の一口最大出力、利用時間によって料金が決まる方式へ移行した。ここで基準になるのは車両が実際に受け取った出力ではなく、充電器側の一口最大出力である。

なお、今回の変更はeMP直営充電器のビジター料金が対象で、提携充電器の料金は各充電器によって異なる。eMPや自動車メーカーなどが発行する充電カードを使う場合も、各カード事業者の料金が適用される。

2026年4月1日以降のビジター料金

課金方式充電器の一口最大出力高速道路一般道路
kWh課金区分なし143円/kWh110円/kWh
時間課金50kW以下77円/分55円/分
時間課金50kW超~100kW以下99円/分77円/分
時間課金100kW超121円/分99円/分

料金はいずれも税込で、急速充電器はkWh課金の場合も1回30分まで。高速道路は整備・運営管理費が一般道路より高いとして、別単価が設定された。ビジター利用にはスマートフォンと日本国内発行の対応クレジットカードが必要だが、eMPアプリの会員登録は必須ではない。

公式情報:eMP「kWh課金の導入と出力別時間課金への移行」ビジター利用料金

対象規模を正しく見る

開始時点の177口は、2026年1月末時点のeMPネットワーク急速充電器9,784口に対して約1.8%であり、「約1%」ではない。高速道路分は148口なので、高速道路の急速充電器1,084口に対して約13.7%、おおむね14%となる。

新東名の浜松SA・足柄SA、中央道の談合坂SAは2026年4月1日時点の対象一覧には含まれていなかった。ただし、これは開始時点の状況であり、恒久的な対象外を意味しない。eMPは対象スポットを今後順次拡大するとしている。

kWh課金は必ず安いわけではない

kWh課金は「使った電力量分だけ支払う」という点で公平性が高い。一方、今回の110円・143円/kWhというビジター単価では、高出力を長く維持できるEVは時間課金の方が安くなる場合もある。損得は車両の公称最大出力だけでなく、到着時SOC、電池温度、充電カーブ、充電器のパワーシェアリングなどで変わる。

日産サクラで試算

日産サクラの急速充電受入能力は最大30kWで、30kWを超える充電器につないでも車両側で最大30kWに制限される。仮に30分間、平均30kWで15kWhを受電できたとすると、一般道路のkWh課金は1,650円、高速道路は2,145円となる。

50kW以下の時間課金で30分利用した場合は一般道路1,650円、高速道路2,310円なので、この条件では一般道路は同額、高速道路はkWh課金が165円安い。ただし、低温時や高SOC域で受電量が10kWhに落ちれば、kWh課金は一般道路1,100円、高速道路1,430円となり、時間課金との差が広がる。反対に、比較対象の時間料金は充電器の一口最大出力区分で変わるため、利用する設備まで見なければ正確な比較はできない。

車両仕様:日産サクラ取扱説明書「急速充電」

PHEVは「公平」でも、必ず割安とは限らない

CHAdeMO急速充電に対応するPHEVは、一般に受電出力や一度に入る電力量が小さく、時間課金では割高になりやすい。その意味ではkWh課金との相性がよい。ただし、すべてのPHEVが急速充電に対応するわけではなく、143円/kWhでは走行距離当たりの費用がガソリン走行を上回る場合もある。「料金の公平性が高まること」と「走行コストが安くなること」は分けて考える必要がある。

4台所有オーナーとしての充電戦略

Tesla Model 3 LR・Model Y・Hyundai KONA・日産サクラの4台を所有する立場では、まず契約中の充電カード料金、ビジター料金、利用可能な充電規格を確認し、そのうえで経路上の設備を選ぶのが現実的だ。

Model 3 LR/Model Y: 私の運用はテスラスーパーチャージャーが中心なので、今回の改定による直接の影響は小さい。eMPのCHAdeMO急速充電器を使う場合は、車両側の対応状況や必要な接続手段、適用されるカード料金を事前に確認する。

KONA: 日本仕様はCHAdeMOに対応し、64.8kWh車はヒョンデ公式で90kW級充電器を使った10~80%充電が約45分と案内されている。「最大受電出力が低いからkWh課金が必ず得」とは決めつけず、実際の受電量と時間料金を比較したい。ヒョンデ公式充電ガイド

日産サクラ: 最大30kWのため、電池が冷えている時やSOCが高い時ほどkWh課金の公平性を実感しやすい。ただし、対象スポットはまだ限定的で、ビジター単価自体も安くはない。

会員料金へのkWh課金は未定

eMP会員や自動車メーカー各社の充電カード利用者には、それぞれの事業者が定める料金が適用される。eMPは会員料金へのkWh課金も検討するとしているが、2026年7月時点で導入時期は公表していない。したがって「会員は従来どおりだから今後も影響しない」と断定するのではなく、カード事業者の最新料金を随時確認する必要がある。

公式FAQ:会員料金へのkWh課金導入計画

まとめ——公平性は向上、ただし値下げとは限らない

確認項目内容
対象開始時点で直営96カ所・177口のビジター利用
規模eMPネットワーク急速充電口の約1.8%
単価高速道路143円/kWh、一般道路110円/kWh
対象外の直営設備立地・一口最大出力・時間による課金
会員・提携カード各カード事業者の料金を適用
利用上限急速充電は1回30分まで
今後kWh課金対応スポットを順次拡大予定

kWh課金は、低出力車や充電速度が低下した場面でも、実際に受け取った電力量に応じて支払える点で前進だ。ただし今回のビジター単価は高く、すべての車両・場面で時間課金より安くなるわけではない。目的地までに必要な電力量、車両の充電性能、SOCと電池温度、充電器の出力区分、利用中のカードプランを合わせて判断することが、現時点で最も合理的な充電戦略になる。


長谷川 孝 / ev-note.jp
Tesla Model 3 LR・Model Y・Hyundai KONA・日産サクラ オーナー|浜松在住・太陽光+Powerwall運用中

長谷川

2021年よりテスラ Model 3 でEVオーナーとしてのキャリアをスタート。現在はテスラ Model 3・Model Y、Hyundai KONA、日産サクラの計4車種を保有し、日常使いから長距離走行まで実践的に運用しています。
TOCJ(Tesla Owners Club Japan)全国ミーティング、New Year EV MEET 2026、ジャパンEVラリー白馬などのEVオーナーズイベントや、Japan Mobility Showの見学など、現場での情報収集にも積極的に取り組んでいます。多数の試乗経験と4台のオーナー経験をもとに、日本におけるEVの実態を一次情報として発信。購入検討から日常運用まで、実体験に基づいた信頼性の高い情報提供を心がけています。
現在の所有車:Tesla Model 3 / Tesla Model Y / Hyundai KONA Electric / 日産サクラ
テスラ車購入時に使用できる紹介コード:
https://www.tesla.com/ja_jp/referral/hasegawa44580
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