テスラFSD日本解禁への制度変化——欧州承認と国交省L2++方針を再検証【2026年7月更新】

テスラFSD日本解禁への制度変化——欧州承認と国交省L2++方針を再検証【2026年7月更新】 EV考察

2026年4月10日、欧州と日本で高度運転支援をめぐる二つの動きが重なった。オランダの車両認証機関RDWは、テスラのFSD(Supervised)に型式認定を発行。同じ日、日本では「第2回 国土交通省自動運転社会実現本部」が開かれ、高度なレベル2車両、いわゆる「L2++」の優良車認定制度を2026年中を目途に創設する方針が示された。

二つの制度は直接連動しておらず、同日に起きたことが日本版FSDの承認を意味するわけではない。それでも、海外で高度運転支援の実運用が始まり、日本でも評価・普及の枠組みが具体化した日として重要である。本稿では、4月10日に何が決まり、何が決まっていないのかを2026年7月時点から再検証する。

日本導入時期の最新予想とHW3/AI4の詳細は、本編「テスラFSD、日本解禁はいつか【2026年7月最新版】」で更新している。


欧州承認の実像:完全自動運転の解禁ではない

RDWは2026年4月10日、FSD(Supervised)の型式認定を発行した。RDWが強調するのは、FSD(Supervised)が自律走行システムではなく、運転者が責任を負う高度運転支援であることだ。運転者は交通に参加し続け、常に制御を引き継げる状態でなければならない。

当初の認定はオランダ国内でのみ有効で、EU全域への一括承認ではなかった。RDWは、EU全域へ広げるには欧州委員会への申請、加盟国の投票、所管委員会での多数賛成が必要だと説明している。したがって「オランダで認定されたのでEU全域で自動的に解禁」という理解は正確ではない。

認定の技術的・法的資料には商業上機微な情報も含まれ、RDWはすべてを公開していない。そのため、UN Regulation No.171やEU規則の特例手続きとの関係を外部から断定し過ぎるべきではない。確認できるのは、RDWが欧州法令に沿ってシステムを審査し、オランダで使用可能な型式認定を与えたという範囲である。

出典:RDW「オランダで暫定的に有効なFSD認定の説明」


18か月の審査と認定後の継続監視

RDWの6月17日の追加説明によると、審査は18か月以上に及び、試験場と公道で3,000時間超、1,000回超の独自試験を実施した。テスラが欧州で収集した180万kmの走行データについても、収集方法、完全性、検証可能性、統計分析をRDWが確認している。

認定後も監視は続く。RDWはメーカーからの報告頻度を通常の年次から月次へ一時的に引き上げた。6月17日時点では、オランダのFSD(Supervised)搭載車約4万台が認定後に約2,400万kmを走行し、関連する事故は確認されていないとしている。ただし、これは同日時点のRDW報告であり、将来の安全性を無条件に保証する数字ではない。

出典:RDW「FSD Supervised型式認定の追加説明」


L2++は新しい自動運転レベルではない

4月10日に方針を示したのは交通政策審議会ではなく、国土交通大臣を本部長とする「国土交通省自動運転社会実現本部」である。国交省は、L2++と呼ばれる高度なシステムを搭載した自家用車の開発と社会受容性向上を促すため、「優良車認定制度」を2026年中を目途に創設するよう制度の具体化を進めるとした。

ここで注意したいのは、L2++がSAEや日本の道路交通法に新設された正式な自動運転レベルではない点だ。国交省資料でも、L2++は運転者が周辺を監視するレベル2の範囲に置かれている。「ドライバー関与をほぼ必要としない」という表現は、日常的な操舵・加減速への介入を減らす技術目標を表す一方、運転者の監視責任がなくなることを意味しない。

したがって、FSD(Supervised)を「レベル2でも3でもない第三のカテゴリー」と説明するのは誤りである。FSD(Supervised)も運転者の能動的監視を必要とするレベル2運転支援であり、その特徴がL2++という政策上の呼称と重なる可能性がある、という整理が適切だ。

出典:国土交通省「第2回 自動運転社会実現本部」「自動運転社会の早期実現に向けた当面の方策について」


2027年度の国産L2++車とテスラは別の話

国交省資料には「将来のL4車に繋がる国産L2++車が2027年度中に市販化される予定」とある。資料に掲載された例は、日産自動車と英国WayveのAIを活用した開発計画であり、テスラFSDの2027年度導入を示したものではない。

また、資料は「多様なL2++車(商用車を含む)の開発・普及」を掲げているが、テスラを対象にすると名指ししてはいない。制度が性能を基準とするなら海外メーカーも対象となる可能性はあるものの、対象範囲や評価要件は制度の正式決定を待つ必要がある。


路車協調は重要だが、Tesla FSDの必須条件ではない

国交省は、自動運転車と道路インフラの情報連携を加速する方針も示している。路側カメラやセンサーから死角、信号、合流車両などの情報を車両へ提供する路車協調は、自動運転サービス車両やトラックの安全性・円滑性を高める有力な方法である。

一般道の実証ではBYD J6を含む複数の車両が使われており、海外メーカー製車両が国内実証へ参加した事例として確認できる。ただし、これは将来のL2++認定制度がテスラなど全外資メーカーに適用されることを直接証明するものではない。

また、カメラ主体で車両単独の判断を行うTesla FSDが、日本で路車協調を必須とされる根拠も現時点ではない。路車協調は日本の自動運転政策を構成する重要な取り組みだが、個人所有車向けFSDの認定経路とは分けて考える必要がある。参考:国土交通省「自動運転車とのインフラ連携の取組」


HW3にもv14 Liteという経路が生まれた

4月時点ではHW4中心の展開が予想され、HW3の対応時期は不透明だった。その後、テスラは2026年6月末に米国でHW3(AI3)向け「FSD(Supervised)v14 Lite」の早期アクセス配信を開始し、7月には一般ユーザーへの段階配信も始めた。韓国でもHW3向け早期アクセス配信が始まっている。

v14 LiteはAI4向けv14の運転判断をHW3で処理できるよう圧縮・最適化したものだ。これにより「HW3は初回提供から除外される」とは断定できなくなった。日本でFSDが認可された場合にもHW3向けLite系が提供される可能性はあるが、対象車両、機能差、提供順は未発表である。

参考:米国でのv14 Lite初期配信韓国でのHW3展開


国際規則も前進したが、FSDを直接解禁するものではない

記事公開時に「2026年6月の採択見込み」としていたADS国際規則は、6月24日にWP.29で採択された。これはレベル4など、システムが動的運転タスク全体を担うADSの国際枠組みである。運転者が常時監視するFSD(Supervised)の承認を直接決める規則ではなく、高度なレベル2運転支援にはUN Regulation No.171(DCAS)とその改正がより直接的に関係する。

したがって、ADS国際規則の採択を、日本版FSDの承認条件がすべて整った証拠として扱うことはできない。出典:UNECE GRVAの活動記録


利用者の声と制度審査の関係

保安基準などを改正する際には、原則としてパブリックコメントが実施される。具体的な安全上の論点や利用実態を意見として提出することには意味があるが、特定製品の審査を早める投票制度ではない。

ライドアロング参加者が、成功場面だけでなく介入や違和感を含めて具体的に記録することも、社会が技術を正しく理解する材料になる。「FSD=完全自動運転」とする過大評価と、「運転支援はすべて危険」とする一括否定のどちらも避け、レベル2としての責任範囲と限界を共有することが重要だ。


2026年7月時点の見立て

4月10日は、オランダでFSD(Supervised)が実際に認定され、日本で高度なレベル2車両を評価・普及させる方針が示された日として記録に値する。一方、欧州認定と日本のL2++制度は別々の制度であり、この一致だけを日本解禁の根拠にはできない。

その後、欧州・アジア太平洋地域での展開、HW3向けv14 Lite、国交省の2026年中の認定制度創設方針など、導入を後押しする材料は増えた。ただし、日本向けの承認、対象車両、配信日はまだ公表されていない。

現時点では、楽観シナリオを2026年末、中心シナリオを2027年前半、慎重シナリオを2027年後半以降と見る。テスラジャパンが示す2026年内実装は重要な目標として受け止めつつ、正式な開始日とは区別する必要がある。


本稿は2026年7月23日時点の公開情報に基づきます。規制当局の判断、制度設計、テスラの開発・配信状況により見通しは変動します。

長谷川

2021年よりテスラ Model 3 でEVオーナーとしてのキャリアをスタート。現在はテスラ Model 3・Model Y、Hyundai KONA、日産サクラの計4車種を保有し、日常使いから長距離走行まで実践的に運用しています。
TOCJ(Tesla Owners Club Japan)全国ミーティング、New Year EV MEET 2026、ジャパンEVラリー白馬などのEVオーナーズイベントや、Japan Mobility Showの見学など、現場での情報収集にも積極的に取り組んでいます。多数の試乗経験と4台のオーナー経験をもとに、日本におけるEVの実態を一次情報として発信。購入検討から日常運用まで、実体験に基づいた信頼性の高い情報提供を心がけています。
現在の所有車:Tesla Model 3 / Tesla Model Y / Hyundai KONA Electric / 日産サクラ
テスラ車購入時に使用できる紹介コード:
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