CEV補助金、4月からの車種別補助金額が確定——最大130万円の恩恵を受けるのは誰か、ランキングと政策意図を解剖する

EVのお金の話

今日のニュース:4月1日から「いくら」もらえるかが確定した

2026年3月27日、次世代自動車振興センター(NeV)が令和7年度補正CEV補助金の「4月1日以降の登録分に適用される車種別補助額(予定)」を公式PDFで公開した。これが今日初めて明らかになった情報だ。申請受付も3月31日(火)から開始予定と同日発表された。

ただし正確に理解するには、背景を押さえる必要がある。


補助金の経緯:大枠は2025年末に変わっていた

「最大130万円」という数字は今日出た話ではない。

2025年12月18日、経済産業省は日米関税協議の合意を踏まえてCEV補助金の上限額を大幅に改定し、2026年1月1日登録分からすでに適用されている。

車種区分〜2025年12月(旧制度)2026年1月〜(現行制度)
EV(普通車)最大90万円最大130万円(+44%)
PHEV最大60万円最大85万円(+42%)
軽EV最大58万円最大58万円(据え置き)
FCV最大255万円最大150万円(▲41%)

この時点では上限額の枠組みだけが変わり、「各車種が具体的にいくらもらえるか」は「3月中に決定予定」とされていた。そして今回3月27日、その具体的な金額が初めて公表された。これが今日のニュースの実態だ。


旧補助額と新補助額の比較——何が変わったのか

以下はすべて公式PDF(R8.3.27現在)から直接取得した正確な数値だ(単位:千円を万円に換算)。

国産車・テスラ:高水準で確定

車種1〜3月登録分4月〜12月登録分R9.1.1〜
トヨタ bZ4X 全グレード(旧型・新型共通)130万円130万円130万円
トヨタ bZ4X Touring Z(FWD/4WD)130万円130万円130万円
日産 リーフ B5/B7 全グレード129万円129万円100万円
日産 アリア 各グレード129万円129万円100万円
スバル SOLTERRA 各グレード(新型)128万円129万円129万円
テスラ モデル3 RWD(新型類別)127万円127万円127万円
テスラ モデルY RWD(新型類別)127万円127万円127万円
スズキ eビターラ X/Z(全グレード)127万円127万円98万円
ホンダ Honda e Advance129万円130万円130万円

国産車・テスラは1〜3月とほぼ同水準で4月も確定した。日産リーフは来年1月(R9.1.1〜)から100万円への段階的な減額が予告されており、金額算定の基準が国産電池の採用を重視する方向に変更された影響を受けたと考えられる。

BYD:全車種が15万円に大幅削減

今回の改定で最大の変化はBYDだ。

車種1〜3月登録分(旧)4月〜12月登録分(新)変化
BYD ATTO 3(全グレード)35万円15万円▲57%
BYD ドルフィン Baseline / Long Range 各グレード35万円15万円▲57%
BYD シール RWD(給電機能あり類別:0112/0012)45万円15万円▲67%
BYD シール RWD(その他類別)35万円15万円▲57%
BYD シール AWD(全グレード)35万円15万円▲57%
BYD シーライオン7 FWD/AWD35万円15万円▲57%

BYDの補助額が4月から全車種一律15万円に統一となった。シール RWDの一部グレードは旧制度で45万円だったため最大67%の削減だ。日本経済新聞は「国産電池を採用するメーカーなどを優遇し、BYDは35〜45万円だった補助額が15万円に半減となった」と報じており、BYDオートジャパンの東福寺社長が「勝負にならない」と反発したとも伝えている。

ヒョンデ:車種・グレードによって大きく三分される

ヒョンデは車種・型式・非亟駆区分によって補助額が大きく分かれる。単純に「FWDは高く、AWDは低い」とは言い切れない複雑な構造だ。

車種・グレード1〜3月登録分4月〜12月登録分R9.1.1〜
KONA(新型 HA871/HA861 各グレード)67万円47万円47万円
IONIQ 5 FWD各グレード(Voyage L/L+/Voyage/Lounge)87万円87万円47万円
IONIQ 5 AWD(Voyage L AWD/Voyage L+ AWD — KL8C1型)87万円87万円47万円
IONIQ 5 AWD(Voyage AWD/Lounge AWD — KL8C1型)87万円47万円47万円
IONIQ 5 N67万円37万円37万円
INSTER(Cross以外 全グレード)56万円47万円47万円
INSTER Cross56万円37万円37万円

IONIQ 5のFWDグレードは87万円を維持したが、同じIONIQ 5のAWDグレードは47万円に削減される点は購入検討時に注意が必要だ。


「実質購入価格」で見るランキング

4月1日以降の登録、自家用、メーカー希望小売価格(税込参考)で算出。

200万円台で買えるEV(軽EV)

車種税込価格(参考)補助額実質購入価格
日産 サクラ S253万円58万円195万円
日産 サクラ X260万円58万円202万円
日産 サクラ G308万円58万円250万円

300〜400万円台前半(実用的な普通車EV)

車種税込価格(参考)補助額実質購入価格
スズキ eビターラ X399万円127万円272万円
スバル SOLTERRA ET-SS(FWD 新型)517万円〜129万円388万円〜
トヨタ bZ4X G(FWD)480万円130万円350万円
トヨタ bZ4X Z(FWD)550万円130万円420万円
トヨタ bZ4X Touring Z(FWD)575万円130万円445万円
テスラ モデル3 RWD531万円127万円404万円
テスラ モデルY RWD534万円127万円407万円
ヒョンデ IONIQ 5 Voyage L(FWD)499万円87万円412万円
日産 リーフ B5G565万円129万円436万円

※価格はすべて税込参考値。補助額はR8.4.1〜R8.12.31登録分(予定)。ヒョンデ IONIQ 5はFWDグレード87万円に対し、同じIONIQ 5のAWDグレードは47万円となる点に注意。

BYD各車種の実質購入価格(4月〜)

車種税込価格(参考)補助額実質購入価格
BYD ドルフィン Baseline299万円15万円284万円
BYD ドルフィン Long Range374万円15万円359万円
BYD ATTO 3418万円15万円403万円
BYD シーライオン7495万円15万円480万円
BYD シール RWD528万円15万円513万円
BYD シール AWD605万円15万円590万円

1,100億円の予算規模が意味すること

令和7年度補正予算でのCEV補助金総額は1,100億円だ(前年度1,291億円からやや減)。想定平均補助額100万円で試算すると約11万台、70万円混在では約15.7万台の支援規模になる。2026年2月のEV・PHEV新車販売は年換算で約9万台ペースのため、1,100億円は現在の需要の1〜2年分を支える規模感だ。補助金は先着順で予算が尽きた時点で終了となるため、昨年度同様に年末〜2027年初頭に予算が底をつく可能性があり、その場合は例年通りであれば補正予算による手当が想定される。


この補助金は「本気のEVシフト」か「差別的な産業保護」か

今回の制度を俯瞰したとき、二つの顔が見える。

本気のEVシフトという側面として、EV最大44%増・PHEV42%増と補助金を積み増したことは、2035年の新車電動車100%という国策目標を堅持する明確なシグナルだ。

国内産業保護・中国車排除という側面として、BYDへの補助が一律15万円への大幅削減は単なる格差ではなく、事実上の制裁に近い水準だ。国産EVが100〜130万円を受け取るなかでBYDが15万円に抑えられるという構図は、「EVシフト推進」と「中国メーカー排除」の二重構造になっている。今回の減額要因として国産電池採用が評価基準に加わったとみられ、これは日本の電池産業育成という産業政策の色彩が強い。

国産EVとBYDの補助額格差は最大115万円(bZ4X 130万円 vs BYD 15万円)。ヒョンデ(韓国系)はFWD 87万円・AWD 47万円と中国メーカーよりも高い水準にあり、格差は中国メーカーに対して特に集中している。

BYDオートジャパン社長が「勝負にならない」と公言するほどの格差だ。仮にBYDが日本でシェアを取ろうとするなら、補助金格差を乗り越えるだけの価格競争力か、あるいは評価基準を満たすための日本への追加投資(充電インフラ整備・国産電池採用等)が必要になる。

なお今回の上限引き上げの直接の契機は、テスラを擁する米国が「EVとFCVの補助額差が非関税障壁」と指摘したことだ。EVの上限が上がった恩恵は国産車とテスラに集中し、中国車(BYD)はむしろ削減されるという結果になっている。

FCVはトヨタ MIRAI等が対象で、255万円→150万円と大幅に引き下げられた。「水素社会の旗手」として維持してきたFCV補助の縮小は、政府内でのエネルギー戦略の優先順位が変化していることを示唆している。


4台のEVオーナーとして:今すぐ動くか、4月の新型サクラを待つか

Tesla Model 3・Model Y・KONA Electric・日産サクラの4台を所有する立場から、率直に述べる。

特に注目しているのはbZ4Xツーリングだ。先月発売のこのモデルは航続734km(FWD・WLTC)・150kW充電・619Lの荷室という実用性で、補助金後の実質価格は445万円(Touring Z FWD 税込約575万円-130万円)となる。この価格帯でこのスペックは現時点で最もバランスが良い選択肢の一つだ。4月に発売が予定されている兄弟車のスバル・トレイルシーカーも有力な選択肢になるだろう。

また4月には日産サクラのフルモデルチェンジが発表される予定で、外観刷新・100V外部給電追加が見込まれる。現行型の実質250万円台という価格競争力に新機能が加わる。EV性能の向上はない見込みだが、今乗っているサクラのオーナーとして続報が気になるところだ。

補助金は先着順だ。まだ焦る時期ではないが、既に納車見込みが秋になる車種も出てきている。購入を検討中であれば今すぐディーラーに相談することを勧める。


まとめ

今日の発表は「4月1日以降の車種別確定額」だ。制度の大枠(最大130万円への増額)は2025年末にすでに決まっており、今回は「具体的にいくらもらえるか」が初めて確定した。

今回の最大の変化点はBYDへの補助額が全車種一律15万円に大幅削減されたことだ。国産EVの補助額(100〜130万円)との差は最大115万円に拡大し、補助金が事実上の競争阻害要因となっている。これは「EVシフト推進」と「国内産業保護・中国車排除」という二重の政策意図が重なった結果だ。率直に言って、流石にこれはやりすぎだろうというのが偽らざる気持ちだ。今後の中国製EVの日本への導入は、慎重にならざるを得ないだろう。


📌 申請スケジュール

  • 3月31日(火):令和7年度補正CEV補助金 申請受付開始予定
  • 対象:2025年12月16日以降の新車新規登録車両
  • 申請方法:オンラインまたは郵送(登録日から原則1ヶ月以内)
  • 問い合わせ先:次世代自動車振興センター https://www.cev-pc.or.jp

長谷川 孝 / ev-note.jp

Tesla Model 3・Model Y・KONA Electric・日産サクラ オーナー

長谷川

2021年よりテスラ Model 3 でEVオーナーとしてのキャリアをスタート。現在はテスラ Model 3・Model Y、Hyundai KONA、日産サクラの計4車種を保有し、日常使いから長距離走行まで実践的に運用しています。
TOCJ(Tesla Owners Club Japan)全国ミーティング、New Year EV MEET 2026、ジャパンEVラリー白馬などのEVオーナーズイベントや、Japan Mobility Showの見学など、現場での情報収集にも積極的に取り組んでいます。多数の試乗経験と4台のオーナー経験をもとに、日本におけるEVの実態を一次情報として発信。購入検討から日常運用まで、実体験に基づいた信頼性の高い情報提供を心がけています。
現在の所有車:Tesla Model 3 / Tesla Model Y / Hyundai KONA Electric / 日産サクラ
テスラ車購入時に使用できる紹介コード:
https://www.tesla.com/ja_jp/referral/hasegawa44580

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