世界の電気自動車(EV)市場では、販売拡大が続く一方で、自動車メーカーによる開発計画の見直しも進んでいます。2026年6月8日時点で注目された5つのニュースについて、その後に判明した情報と一次資料を加えて検証します。
1. Lexus、次世代EV「LF-ZC」量産車の開発を中止
Lexusが2023年に公開し、当初2026年の量産化を目指していた次世代EVコンセプト「LF-ZC」は、量産車の開発が中止されました。報道時点では日本経済新聞が伝えた情報でしたが、その後、トヨタの中嶋裕樹副社長も開発中止を認めています。
なお、LF-ZCに全固体電池を搭載することは公式には発表されていません。トヨタと出光興産が2027~2028年の実用化を目指す全固体電池の開発計画は、LF-ZCとは分けて捉える必要があります。約1,000kmという航続距離目標も、トヨタが示した次世代リチウムイオン電池の技術ロードマップに基づく数値であり、LF-ZCの確定仕様ではありません。
LF-ZCは公式発表時には2026年の投入を目指していましたが、その後2027年半ばへ延期されたと報じられ、最終的に開発中止となりました。一方、トヨタは次世代電池を含む電動化技術の研究開発を継続しています。
出典:Lexus公式発表/トヨタ・出光の全固体電池計画/開発中止後の幹部発言を伝えた報道
2. 37か国でEV販売が月間最高を記録
S&P Global Mobilityのデータを基にした日本経済新聞の報道によると、2026年3月に28か国、4月に9か国の計37か国でEV販売が月間最高を記録しました。IEA(国際エネルギー機関)も、2026年3月には約30か国で月間販売記録が更新され、さらに約60か国で前年同月を上回ったと報告しています。両者は集計対象と期間が異なるため、数字を区別して見る必要があります。
中東情勢による原油価格上昇はEVへの関心を高める追い風になった可能性がありますが、販売増加には車種の拡充、車両価格の低下、政策支援、充電環境など複数の要因があります。原油価格だけを原因と断定することはできません。
IEAによると、2025年の世界の電気自動車販売は約2,100万台で前年比20%超増となり、世界の新車販売のおよそ4台に1台を占めました。また、2025年に世界で生産された約2,200万台の電気自動車のうち、約4分の3が中国で生産されました。中国からの電気自動車輸出は前年比で倍増し、250万台を超えています。ここでは「販売台数」と「生産台数」を混同しないことが重要です。
出典:IEA Global EV Outlook 2026・概要/IEA・生産と貿易
3. BYD、2026年5月は9か月ぶりの前年同月比増
BYDが発表した2026年5月の新エネルギー車販売台数は383,453台で、前年同月比約0.3%増となりました。8か月連続の前年割れを経て、9か月ぶりに前年同月を上回ったことになります。
この数字はBEVだけではなく、プラグインハイブリッド車(PHEV)を含む新エネルギー車全体の販売台数です。海外での乗用車・ピックアップ販売は160,177台で前年同月比約81%増となり、全体の約42%を占めました。国内市場の伸び悩みを海外販売が補った形です。
4. Nissan「Primera EV」をフィリピンで公開
Nissan Philippinesは、Dongfeng Nissan N7をベースとする電気セダン「Primera EV」を、2026年6月4日に開幕したフィリピン国際モーターショーで公開しました。フィリピンでは2026年中の発売が予定されています。
中国仕様のN7には最大73kWhのLFPバッテリーが設定され、中国のCLTC基準で最大635kmの航続距離、30%から80%まで約14分という急速充電性能が案内されています。ただし、これらは中国仕様の数値であり、フィリピンで販売されるPrimera EVの正式なグレード、認証航続距離、充電性能は現地での最終発表を待つ必要があります。
NissanはN7とFrontier Proを2026年4月から1年以内に中国国外へ投入する計画を示していますが、「Primera EV」の名称で世界各国に展開することまで確定したわけではありません。ASEAN・中南米などへの輸出方針と、各市場での商品名・仕様は分けて扱う必要があります。
出典:Nissan 2025年度決算資料/フィリピン国際モーターショーでの展示内容
5. Volkswagen ID. PoloとCUPRA Raval、スペインで量産開始
Volkswagen Groupは、スペイン・マルトレル工場でCUPRA RavalとVolkswagen ID. Poloの量産を開始しました。CUPRA Ravalは2026年夏の市場投入が公式に案内されています。ID. Poloについては、同じ時期の発売と一括して断定せず、各モデルの正式な販売案内を確認する必要があります。
Volkswagen Groupの「Electric Urban Car Family」は3ブランド4車種で構成されますが、4車種すべてをマルトレル工場で生産するわけではありません。マルトレルではCUPRA RavalとVolkswagen ID. Polo、パンプローナ(Navarra)ではVolkswagen ID. CrossとŠkoda Epiqを生産する計画です。
まとめ
- Lexus LF-ZC量産車の開発中止は、その後トヨタ幹部も認めた
- LF-ZCへの全固体電池搭載や約1,000kmの航続距離は確定仕様ではない
- 世界各国のEV販売記録と原油高には時期的な関係があるが、単一の原因とは断定できない
- BYDの383,453台はPHEVを含む新エネルギー車全体の数字
- Primera EVの中国仕様ベースの数値と、フィリピンでの正式仕様を区別する
- Volkswagen Groupの都市型EV4車種は、スペインの2工場で分担して生産される
※本記事は2026年6月8日時点のニュースを、その後に公表された公式情報を加えて2026年7月26日に再検証・更新しました。

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