7月26日のEVニュースを貫くのは、EV普及策が単純な購入補助から、価格設定、車両供給、電池産業、充電インフラを一体で動かす段階に入ったことである。スペインは2030年まで有効な支援制度の規則を整え、BMWは英国の補助条件に合わせて価格を調整した。一方、ラオスは燃料を使う小型車を中心に輸入を一時停止し、ポーランドでは車両と充電器を同時に調達した。政策が市場の選択肢そのものを変え始めている。
これらの海外制度や価格は日本には適用されない。しかし、購入価格だけでなく、補助対象になる時期、充電環境、整備網、電池供給まで確認して車を選ぶ必要性は日本でも共通する。
注目ニュース
スペイン、2030年末まで有効なEV補助制度「Auto+」を承認
スペイン政府は2026年7月21日、EV・電動車購入支援制度「Auto+」の規則を承認した。制度は2026年1月1日以降の対象購入へ遡及適用され、2030年12月31日まで有効となる。一方、4億ユーロは2026年分の予算であり、2030年までの総予算が4億ユーロという意味ではない。一般個人・通常企業のM1乗用車は最大4500ユーロ、自営業者・零細企業のM1は最大6000ユーロ、社会気候基金の対象となる自営業者・零細企業のM1は最大7000ユーロで、N1バンなどは別額である。詳細はスペイン政府の閣議資料で確認できる。
制度の有効期間と、各年度に確保された予算は分けて見る必要がある。2027年以降の実際の募集と予算は年度ごとの決定を確認しなければならず、制度期間だけを根拠に将来の補助金を購入計画へ確定額として組み込むべきではない。
ラオス、燃料使用小型車の輸入を年末まで一時停止
ラオス政府は2026年6月1日から年末まで、燃料を使用する小型車を中心に輸入を一時停止した。公共交通、事業・プロジェクト用途、特殊用途などには例外が設けられていると報じられており、すべてのガソリン・ディーゼル車を対象とする恒久的な輸入禁止ではない。政府はEV輸入についても、正式な認可とアフターサービス拠点を備えた企業に限定する方針を示している。最新状況はラオス国営通信KPLで確認できる。
購入補助とは異なり、市場へ入る車両を直接制限する強い政策である。ただし、充電網や電力供給、修理体制が追いつかなければ利用者の負担が増える。EVへの移行では、販売台数だけでなく正規整備、部品供給、故障時の搬送を同時に整える必要がある。
CATL、上期の株主帰属純利益42%増・A株買い戻し案
CATLの2026年上期売上高は前年同期比54.8%増の2769億2000万元、株主に帰属する純利益は42.0%増の432億8000万元となった。同社は自己資金または調達資金を用い、200億~400億元を投じるA株買い戻し計画も示した。ただし上限400億元がすでに執行されたという意味ではなく、計画・提案段階の金額である。決算と買い戻し資料は香港証券取引所のCATL開示一覧で確認できる。
大手電池メーカーの成長は、量産投資や研究開発を継続する余力を示す。ただし、好決算が日本で販売されるEVの即時値下げや電池交換費用の低下を意味するわけではない。セル価格と完成車価格は直接連動せず、車両メーカーとの契約、為替、物流、電池構成、温度管理、保証条件も価格と使い勝手を左右する。
BMW、英国でiX1・iX2の指定仕様を補助対象価格へ
BMWは英国向けiX1・iX2の一部グレードを値下げし、政府のElectric Car GrantでBand 1の最大3750ポンド割引対象とした。補助対象は価格4万2000ポンド以下などの条件を満たす指定仕様で、BMWはiX1 eDrive20 Sport/xLine/M Sport、iX2 eDrive20 Sport/M Sportなどを案内している。iX1 eDrive20 Sportは補助適用後3万7315ポンドで、WLTP航続距離は装備・条件により297~318マイルである。対象車は英国政府の公式一覧、仕様はBMW UK公式諸元で確認できる。
補助条件がメーカーの価格戦略を直接動かした例である。対象車名だけで判断せず、グレード、オプション込みの価格上限、登録時点の掲載状況を確認したい。日本でも本体価格だけでなく、登録時点の車種別補助額を差し引いた実負担額で比較する必要があり、英国価格やWLTP値は日本仕様へそのまま当てはめられない。
ポーランドGZM、電気バス73台と充電器45基の引き渡しを完了
上シレジア・ザグウェンビエ都市圏は、Solaris製42台とIrizar製31台の電気バス、充電器45基の調達・引き渡しを完了した。車両は4事業者へ配分され、Irizar車は発表時点で「まもなく運行開始」と案内されている。総事業費は約3億500万ズロチで、対象経費の94%超をポーランドの復興・強靱化計画が支援したと報じられている。Irizar車の状況はIrizar公式発表、Solaris車はSolaris公式発表で確認できる。
車両と充電設備を同時に導入しており、稼働計画から逆算した電動化である点が重要だ。ただし車両の引き渡しと通常運行の開始は別段階である。また、充電器の大半は営業所内に置かれ、出力、接続規格、運用時間も乗用車向け公共充電器とは異なるため、45基が一般EVユーザーの充電拠点になるわけではない。
日本のEVユーザーにとっての意味
第一に、車両価格は補助後の金額で比較すべきである。スペインと英国の制度は日本では利用できない。日本ではCEV補助金が車種別に設定されており、2026年4月以降の対象車と金額は次世代自動車振興センターの公式一覧で確認できる。注文日ではなく登録時期が関係する場合があり、自治体補助との併用条件や予算終了も含め、契約前に販売店と公式情報の双方を確認したい。
また、2026年度の国の評価では、車両性能だけでなく、メーカーの充電インフラ整備、供給安定性、サイバーセキュリティ、整備体制なども補助額の評価対象である。これは、購入後の使いやすさまで政策が見る方向を示す事実である。編集部分析としては、補助額の差を単なる値引きと考えず、急速充電への対応、故障時の入庫先、部品供給を確認する入口にするとよい。
第二に、日常の充電条件が実質的な航続距離と電気代を決める。カタログ航続距離が長くても、集合住宅で充電できず公共急速充電へ頻繁に通えば、時間と料金の負担は増える。ポーランドの事例が示す通り、車両数と必要な充電口数、駐車時間をセットで考えることが重要である。集合住宅では管理組合の承認、専用・共用設備の区分、課金方法、将来の増設余地を確認したい。
第三に、CATLの成長は電池供給の拡大を示す一方、個々の中古EVの下取り価格を保証しない。同じCATL製電池でも、車種やグレードにより電池構成、温度管理、充電制御、保証は異なる。下取りでは電池メーカー名だけで判断せず、車両側で確認できるSOHなどの健康状態、急速充電履歴、メーカー保証の残期間、保証継承の条件、修理拠点の有無を比べるべきである。
初めてEVを購入する人へのポイント
初心者は「補助後に安いか」だけでなく、自宅で無理なく充電でき、購入後も整備を受けられるかを先に確認すると判断しやすい。販売店には次の項目を書面で示してもらうとよい。
- 登録予定日に適用される国・自治体の補助額、申請者、申請期限、一定期間の保有義務を確認する。
- 普段の一日走行距離と冬季・高速道路利用を伝え、実用上必要な充電頻度を試算してもらう。
- 戸建てでは分電盤の空き、契約容量、駐車位置までの配線経路、工事見積もりを確認する。集合住宅では契約前に管理会社へ設置可否を照会する。
- 近隣の対応工場、故障時の搬送先、駆動用電池保証の年数・距離・容量条件、保証継承手続きを確認する。
- 公共充電を使う場合は、対応コネクター、最大受入出力、充電サービスの料金体系を実際の生活圏で調べる。
関連ガイドとまとめ
住宅別の設備、工事、契約容量、電気料金の考え方は、EV NoteのEVの自宅充電設置ガイド2026で確認できる。外出先のサービスや充電器を比較する場合はEV充電インフラ完全比較2026も参考になる。
今回の5件は、EV市場が「車を売る」だけでなく、補助条件に合わせた価格、電池の供給力、用途別の充電設備まで含めて設計され始めたことを示す。日本の購入者に必要なのは海外の補助額に期待することではなく、登録時の国内制度と、自宅充電、整備、保証を一つの総費用として比べることである。


コメント